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これまでに、計4回「設計者とクライアントの関係」というテーマで連載をしてきました。
今回は、連載の最終回として公共施設編を書きます。
公共施設のクライアントは、都道府県、市などの地方公共団体になります。
わたし自身は、地方公共団体のお仕事(俗に「役所物件」と言ったりします)は
担当したことはありません。
なので、手伝った経験や聞いた話しなどを主体に書きます。
まず、役所物件の仕事は、入札に参加することから始まることが大半です。
入札にも参加資格があったりして、名目上は実績重視と聞きますが、
実態はドロドロした内部取引もあると思われます。。
役所を糾弾してもしょうがないので、このへんで(笑)。
入札に参加して、値入をして、実績等を査定されて仕事を落札します。
さて、
ここからは、民間がクライアントの場合と比べてとても時間がかかるのが通例です。
設計者は、役所の担当者と打ち合わせをして仕事の進め方を決めますが、
役所は重層構造なので、
担当者
↓
上司
↓
上司の上司
↓
上司の上司の上司(このくらいまではたいていあるでしょう)
↓
xx長
↓
市長、知事など
↓
官庁、省庁
↓
大臣
このような過程で、数ヶ月くらいかかって予算に関する判子をもらう・・
なんてことはざらでしょう。
こんな仕事の流れがたくさんあるので、中々先に進まないのです。
役所物件を受注した設計事務所は、いつ動くか分からない仕事に対して
人員をある程度確保しておかないといけないことになります。
そういう意味で、余裕のない設計事務所が受注すると危険です。
役所物件は、民間での常識が通用しない進み方をすることも多々あります。
設計が終わって、確認申請が受理されて、いよいよ着工!・・・
で現場事務所を作ったら、仕事が中断。。。
理由は、予算がおりなくなった。。
なんてことも、結構多いようです。
街中で仮設事務所がいつまでも放置されていたら、その可能性が高いです。
理由なんて、考えてもしょうがないので(苦笑)、あきらめるしかない世界です。
民間だったら損害賠償問題ですけどね。。
このような問題がなく、仕事が進む場合は設計料が叩かれるようなこともないので、
比較的良いお仕事の部類になると思います。
ただし、役所がクライアントなので、
工事途中の検査がやたら多かったり、
融通が利かなくて、やり直しが多く発生したり、
なかなか疲れる部分も多いと思います。
以前、ブログでも取り上げましたが、
建築基準法は、建築業界の実態から乖離している部分が多くあります。
民間の仕事であれば、基準法の効率の悪い部分を考慮しない金額で
工事は行われています。
実際問題として、
建築基準法を守ることでクオリティが落ちる部分というのも実際はあります。
このあたりは、実務者の意見を取り入れた改正等が行われる必要があるでしょう。
ですが、
役所は、そういう訳にはいきません。
法の番人なので、効率が良かろうが、悪かろうが、法律通りに指示をするのです
(稀に、設計経験者の方で融通の利く方もいますが)。
民間は、それも含めて覚悟の上で仕事を受注していると思います。
しかし、
仕事の種類によっては、その効率の悪さが命取りになることもあります。
新潟の朱鷺メッセで歩道橋が落橋した事故は、その良い例だと思います。
詳細は、まだ裁判中だと思いますので、控えますが、
難易度の高い構造物を建設するのに、適切でない受注体系や工程が
多々ありました。
地元の設計事務所や建設会社を使うために、実際に設計した事務所に
監理をさせなかったり、難易度の高い構造物の建設経験の浅い地元ゼネコンを
使ったり、発注者側の都合による問題がいろいろありました。
お役所というのは、意思決定について担当者が分散していてある意味責任転嫁
しやすい構造になってます。
起きた問題を、ある特定の担当者一人を責めても無駄になるようにできています。
(ある意味、読みにくい法文も責任逃れに近いものです・・)
この点は、民間では理解できない部分ながら、
受注する設計者としては、議事録を詳細に取ったり、決定事項に関する責任者の
書面をその都度要求するなど、十分に注意したい部分だと思います。
とはいえ、クライアントなので、失礼のない範囲で・・となるのが、難しいところですが。。
個人的に、
役所がクライアントとなる仕事は、
年度末の予算調整がみえみえだったりすると、エンドユーザーの顔が見えないので、
ちょっと、やる気が出ないと思います。。
売上は大事ですけど、設計者としてのプライドは捨てたくないです。
役所の仕事は、全体的にドライなイメージが強いので、
もっと血の通った仕事の目的を持って、進めてもらいたいと思います。
以上です。
「設計者とクライアントの関係」の連載はこれで終了です。
この連載を通じて伝えたかったのは、
仕事の力関係上、
一番上流にいるクライアントの姿勢で仕事の質の大部分が決まる!!
とういことです。
「建築は素人だから、起きた問題は設計者やゼネコンの責任・・・」
というのは、間違っています。
クライアントが出した要望を、設計者やゼネコンが「NO」と言える仕事上の関係性が
できているかどうか?はとても大事なことです。
「NO」ばかり言うのは良くありませんが、「YES」ばかりの設計者やゼネコンだとしたら、
逆に疑うくらいで丁度良いと思います。
設計者もゼネコンも、クライアントに良く思われるために少々無理をしてでも頑張ってしまう
傾向があるのです。
その無理の積み重ねが、「耐震偽装」を産み出した根底にあるのは間違いありません。
クライアント側にも、建築に興味を持ってよく勉強してもらう必要があると思います。
様々な要望の片隅にでもよいので、「構造安全性」をちゃんと意識してくださいね(笑)。
前回は、クライアントが不動産会社(デベロッパーなど)の場合について私見を書きました。
今回は、クライアントが法人(企業)となるオフィスビルの場合について書いてみます。
(オフィスビルもデベロッパーがクライアントであるケースがありますが、今回は除きます)
設計者にとって、クライアントが企業となるような仕事はチャンスだと思います。
純粋に設計料のパーセンテージが比較的良いということもありますが、リピーターになってもらえる可能性があるからです。
企業には、従業員の方がいますから、新築の相談などの2次的な仕事の可能性も増大します。
企業を主なクライアントにできた設計事務所は、それだけでもかなり将来的に事務所経営が
とても楽になると思います(仕事は大変だと思いますが)。
当然ながら、企業側も自社ビルなどの設計を任せるのですから、設計者の選別の目も厳しいです。
なので、下手な設計をしてしまえば多額の損害賠償問題にまで発展することなどもあります。
ただ、
これは仕事をするうえでは、設計に限らず当然の責任なので、そのリスクを恐れて仕事を断るようなことはないでしょう。
設計者にとって、企業から声をかけてもらえることは名誉なことなのです。
しかし、
当然ながら、問題点もあります。
建築と全く関係のない企業がクライアントの場合です。
建築に対する知識があまりない企業だと、設計者任せになってしまいすぎて
後々のクレームなどが多く発生するのです。
上場企業などの大企業では、ビル管理部門のような建築専門の方もいることが多いですが、
それでも設計を専業としている訳ではないので、クレームはあります。
(逆に、設計経験者の方の場合は、ご自分の好みがあったりして、仕事がなかなか進まないこともありました・・・)
設計者側にしてみれば、設計の過程で随時プレゼンをして仕事を進めているつもりでも、
企業側がそのプレゼンのみでは完全に理解できてないことが大半でしょう。
なので、建設中での設計変更などは住宅、マンション同様に結構あります。
ただ、わたしの経験上では、企業の場合は変更設計料が支払われることが多いと思います。
まあ、自社ビルなどを建設できる企業ですから、変更設計料程度は問題ないくらいの金額に
なってしまうんでしょうかね。。すごいですね・・・
(マンションの場合だけ、なぜ設計料がシビアなのでしょう??)
このように、企業がクライアントの場合は、設計者にとってのデメリットはほとんどないので、
社運をかけて仕事に取り組むことが多いでしょう。
では、企業はどのような設計者に仕事を依頼するのでしょう?
コンペ形式で、たくさんの設計者から案を選別することが一番多いと思います。
あとは、設計者と企業の偉い方が知り合いであったりすることも多いです。
(有名建築家は、血筋の良い方々も結構いらっしゃるようです。)
あとは、企業の方が雑誌等を見て直接設計者に依頼してくるケースも多少あります。
つまり、
普通に仕事をしていても、企業からの仕事の依頼はなかなかもらえるものではないと思われます。
実績を積んで、雑誌等でも露出して、メディアに取り上げられるような設計ができないと、
企業には相手にしてもらえないと思います。
以前、ブログで取り上げましたが、
メディアに取り上げられる設計・・・という意味は、良い意味でも悪い意味でもあります(バックナンバーはこちらから)。
悪い意味でのメディアに取り上げられる設計が、運よく企業の目に留まって仕事につながったとしても、実際に良い設計ができなければ、まちがいなく企業からのクレームとなって返ってくるだけだと思います。
そういう意味でも、
クライアントが企業となる場合は、設計者にとっての本当の力量を試される機会であると思われます。
企業にしてみれば、自社ビルは宣伝効果が大きいので、ブランドを求めて有名建築家に仕事を依頼することも多いと思います。
企業との仕事に失敗した有名建築家の話もいろいろ知っていますが、、ここでは控えます(笑)。
以前からブログで取り上げてきていますが、
有名建築家とはなんぞや??ということから、世間一般の常識が変わって欲しいと個人的には思ってます。
無名の設計者でも、素晴らしい設計をできる人はたくさんいるんです。
「無名」である理由が、その人個人の事情によるものであればしょうがないですが、
報酬が低いことが原因であったり、偏ったメディアの取り上げ方が原因であったりすることが、少なくないと感じます。
純粋に、設計の能力に対する評価がされる世の中になってほしいと思います。
そして、企業の方にも良い設計のオフィスで仕事をしてもらって、日本経済を元気にしてもらいたいと思います。
当社も頑張ります!
以上です。
ここからが、ようやく本題です。
不動産会社(デベロッパー)は、建設業界の最も川上に位置する業界です。
上場企業も多いですし、テレビで不動産会社のCMを見ない日はないくらいでしょう。
駅前には、不動産(仲介)業者が数多く店舗を連ねていますよね。
あれだけ競争が激しくても、賃料の高いテナントを借りても、経営が成立しているのです。
不動産関連業務とは、”そういうこと”が成り立つビジネスなのです。。
マンションの計画には、
立案、企画、設計、建設、販売、保守などいろいろあります。
ケースによって違いますが、
設計者は企画・設計に携わることが多いです。
有名な不動産会社では設計部を持っている会社も多いはずですが、
マンションの設計に関しては外注するケースが多いと思います。
優れた設計者に任せたほうが、よいプランができるという面もあると思いますが、
基本的に、安いから外注しているという面がかなりあると思われます。
・・・
マンションの設計料の相場は、オフィスビルや住宅などと比較すると破格に安いです。
建設費の2〜3%程度が設計料となることが多いです。
(オフィスビルは5〜6%、住宅は10%程度が多いでしょう)
同じようなプランの階が積み重なっていくことが多いので、
このような設計料になるのかもしれませんが、最近は各住戸で
プランの異なるようなデザイナーズマンション系のものでも設計料の相場は同じです。
外注したほうが、設計変更などに対して「元請けと下請けの力関係」を発揮できるのも
かなりのメリットになるはずです。
マンションで設計変更料をすべて請求できれば決して安い仕事にはならないのです。
・・・
デベロッパー:「このタイプのプランの人気がないから、変更します。」
設計者:「え?もう、確認申請提出してますが・・・。」
デベロッパー:「変更申請で対応してください。」
設計者:「・・・はあ。。」
デベロッパー:「このプランの開口部を大きくして、キッチンをこっちに動かして・・・」
設計者:「え?ここ耐震壁なので開口を大きくすると構造に影響します。」
デベロッパー:「しょうがないので、なんとかしてください。」
設計者:「・・・構造に相談してみないとどのくらい時間がかかるか分かりません。」
デベロッパー:「着工日は変えられませんからね。」
設計者:「・・・そんなぁ。。。」
これは、設計者とデベロッパーとのある会話の一部抜粋です。
似たような会話をしたことある設計者は、世の中に何人いるでしょう??(苦笑)
もちろん、
この変更に対して、変更設計料が支払われることはわたしの経験上ほとんどありません。
ちなみに、構造設計料は設計料の10〜15%程度が相場です。
構造設計の場合は、プランが同じであれば設計が簡単になるということはありません。
逆に、階数が高くなればなるほど構造計算の難易度が上がるので、
最近の高層化されているマンションの状況から考えると、設計料の相場は技術内容と
反比例して安くなっているものと思われます。
以前ブログでも書きましたが、
特に構造設計については、制度などで、工事金額に対するパーセンテージで最低報酬額を
定めてないと、設計料が安くなれば構造設計料も安くなるという矛盾がでてきます。
耐震偽装で一躍有名になったA氏は、年収が2000万円だったと報道されていました。
年収2000万円という数字は確かにすごい金額ですが、ちょっと考えてください。
年間100棟近い物件を設計していた人です(偽造していましたが)。
しかも、ほとんどの物件が10階建てクラスの中層物件です。
一人で構造設計しているとしたら、一般的には年間5〜10棟がいいところです。
つまり、A氏は通常の10倍以上の物件をこなしていたわけです。
それで、年収2000万円ならば、逆に2000万円”しか”稼いでいないのです。
一般程度に年間10棟構造設計していたら、簡単にいえば年収200万円未満です。
一棟あたり20万円の構造設計料では、普通はマンションの基礎だけしか設計できません。。
その構造設計料が安すぎるということに疑問を持たない、ゼネコンや不動産会社も異常です。
いかに、構造設計という職業が「ブラックボックス」化されていて、
軽視されてきたのかということが理解して頂けるのではないでしょうか?
2000?程度のマンションだと、構造設計料は150万円くらいが現在の相場です。
150万円だと、ちょっとしたホームページ制作費のほうがよっぽど高いです。
(現在のホームページ制作費は高すぎると思ってますが・・・)
ホームページの制作ミスで人命は失われませんが、
構造設計に致命的なミスがあれば、
2000?のマンションで毎日生活している50〜80人もの人命を脅かすことになるのです。
・・・
技術料というものは、視覚的に分かるか、分からないかというだけで、
こんなにも差がつくものか・・・と実感してます。。
・・・
マンションの設計料がいつからこんなに安くなったのでしょう?
それは、やはりバブル崩壊後の長引いた大不況の頃からだと思います。
仕事がないから、安くても仕事を請けざるを得ない状況が長く続いた結果だと思います。
不動産会社のような川上企業は、現在の景気回復の恩恵を受けている企業の一つです。
それでも、設計料はまだ回復していません。
これは、建築業界に関わらずすべての業界について言えることです。
現在の大手企業の業績回復は、人件費削減、下請け叩きの元に成立していることは、
疑うことのない事実です。
いわゆる、「格差社会」というやつです。
バブル崩壊
↓
不動産価格の下落
↓
不動産の不良債権化
↓
不動産所有企業(銀行含む)が痛手
↓
国が税金を投入して銀行を保護
↓
銀行が大手企業の債権放棄
↓
大手企業が最悪期脱出
↓
大手企業がリストラ等で人件費削減
↓
大手企業が業績回復
↓
好景気・・・
こんな流れの好景気で、中小企業や、個人が恩恵を受けるわけがありません。
それどころか、税金という形でいつも損をし続けてきているのです。
ちょっと、脱線しました。。
マンションの場合、
設計者にとってのクライアントはデベロッパーですが、
デベロッパーにとってのクライアントは購入者です。
デベロッパーにも設計に対する知識はかなりありますが、
実際に設計をした設計者には、当然ながら劣ります。
購入者の要望をすべて聞き入れてしまうと、
大変な設計変更になることも稀にあるのです。
購入者がデベロッパーに要望
↓
デベロッパーが設計者に購入者の意向を要望
↓
設計者が変更作業
最悪、
大変な設計変更があっても良しとしましょう。
設計には、変更がつきものです。
ですが、その変更が無償であってはいけません。
たとえば飲食店で、、
客:「注文したA定食、ちょっと食べたら美味しくなかったからこっちのB定食に変えて。」
店員:「はい、構いません。」
・・・お会計
店員「A定食とB定食で合計1500円です。」
客:「は?A定食は美味しくなかったから、B定食分しか払わないよ。」
店員「それでは、困ります!」
・・・
こんなことがまかり通れば、飲食店はすべてつぶれます。。
現在の建築業界は、上記したようなことがまかり通ってしまっている部分が多々あります。
・・・
建築というものは、一度作れば短くても30年は使うことを想定します。
30年以上も使う建物なのに、作るときのスピードが早すぎます。
作るときの採算性に重点を置きすぎています。
不動産会社(デベロッパー)にとってみれば、
初期段階での出費を最大限引き出すことが勝負なのです。
実際は、長いスパンで見ればかなり利益率の高いビジネスモデルなのですが、
それに気づかない購入者が多すぎるのも問題だと思います。
一生に一度の買い物なのですから、
購入者がもっと勉強をしなければならないと思います。
大人になって、結婚して、子供ができて、さて家を買うかな・・・
それから考えるのでは、時間がなく遅すぎます。
「住」の教育を、小学校、中学校くらいから行う必要があると、個人的には思っています。
きりがないので、、とりあえず以上です。
もっといろいろと書きたいことはあるので、またの機会に書いていきます。
次回は、クライアントが法人(企業など)の場合です。
前回は、設計者とクライアントの関係について住宅編として書きました。
今回は、耐震偽装事件でも問題となったマンション編です。
かなり書くことがありそうなので、、2編に分けます。
今は、まさにマンションブームです。
土地があれば、マンションが建つと思って間違いないほど、
あっちもこっちもマンションだらけです。
少し頭打ち傾向が見えてきたようですが、まだまだマンション建設は多いです。
なぜ、こんなにマンションが建つのでしょう?
日本は、土地が高いので少ない土地に住宅を上に積み上げることで
効率良く資金の回収ができるのが一番の理由でしょう。
マンションに対する需要があるから、マンションを建てる訳ですが、
現状は、需要に関わらずマンションを建ててしまうような状況だと感じます。
都心、庭付き、一戸建て。
これは、誰もが思う理想だと思いますが、これを実現できるのは限られた
人のみです。億単位のお金の工面ができる方のみに限定されるでしょう。
そうなると、「住」について何がプライオリティとなるのかが問題となります。
マンションが売れる理由から推測すると、
「都心に住めて手の届くコスト」という部分が大きいのだと思います。
まず、エンドユーザー(購入者)の需要があるから現在のマンションの状況に至っている
ということを強調したいと思います。
「都心に住めて手の届くコスト。」
これは、エンドユーザー側からすれば、”最低限”の要望です。
販売する側からすれば、エンドユーザーの”最大限”の要望をできるだけ
聞き入れたいと思うでしょう。
そのためには、まずマンションというものがどのくらいのコストで建設されて、
どのくらいの価格で販売(賃貸)されるか?を考える必要があります。
つまり、販売側のサービスの限界がどこまでなのか?を知ることが重要です。
これは、ある都内中高層マンション(延べ床5000平米程度)の例です。
・土地
600平米
坪単価250万/坪 → 4億5千万円
・建物
延べ床(10階建ての場合、1階〜10階までの床面積の合計)5000平米
RCマンションの平均的な坪単価70万/坪 → 10億6千万円
(ワンルームマンションのような、同じプランがたくさんあるような場合は
もう少しコストが低くなることがあります)
・総工費
およそ 15億円
となります。
不動産会社(デベロッパー)は、15億円を先行投資して、
分譲や賃貸をして回収するわけです。
分譲の場合の回収例を考えてみましょう。
・分譲価格
3LDK70平米の場合(坪単価270万/坪)→ 5700万円
・分譲戸数
同タイプのものが50戸の場合 → 28億5000万円
・・・なんと、分譲して少々売れ残っても十分利益が出るモデルとなります。。\nその他に、不動産会社の関連の管理会社などに支払われる管理費名目の収入も
かなりあるはずです。
粗利が5割のビジネスなど、そうそうありませんので、
たくさんの不動産会社が、土地があればマンションを建てる理由は納得できると思います。
(実際は、不動産会社の営業経費などを見込めば、もっと少なくなるかと思いますが、
それでも、高収益に違いはありません)
来るか来ないか分からないモデルルームなどに、大人数人が常駐できるわけです。。。
(ちなみに、一人15000円/日で3人で毎月90万円の人件費がかかってます)
そうでもしないと売れないから、その経費を見込んだ収支計画をしているのでしょうが、
そこまでしなきゃ買わないエンドユーザー側の要望があることも忘れないでください。
・・・
「都心に住めて手の届くコスト。」は、
じつは、不動会社から見れば高収益体質のコスト設定に他ならないのです。
お互いにハッピーなのだから、良いのでは?
と思う方もおられるかもしれません。
しかし、それはマンションを設計・建設することを考慮しない場合の考えです。
実際は、そういうわけにはいかないのです。。
・・・その2につづく
北海道で竜巻が発生しました。
かなりの被害がでているようです。
自然の猛威のまえには、わたしたちは小さいものですね。。
・・・
自然現象の一つである、「地震」については以前ブログで書きました。
今回は、「風」について建築的なアプローチで書いてみます。
建物を構造設計をするとき、
建物の強度は何によって決めていると思いますか?
建物に作用する外力をすべて列挙してみましょう。
・地震
・風(台風)
・重力
・熱(内部応力)
です。
ちなみに、構造設計では基本的に考慮しないのは、
・竜巻
・テロなどの人災
です。
(残念ながら、建物は竜巻に対しては安全ではありません。)
建物が、台風などの外力を想定して構造設計されているということは、
意外と知られていないのではないでしょうか?
基本的に、
多くの建物は、地震に対して安全に設計しておけば、台風に対しては安全な場合が多いです。
例外として、
軽い建物の場合は、地震よりも台風に対してちゃんと設計しないと倒壊(転倒など)をすることがあります。
軽い建物とは、プレハブや木造のことです。
木造3階建ての場合は、柱脚の固定金物(ホールダウン金物といいます)は台風の外力によって、その強度を決定することが多いです。
ここで、
「台風って、場所によって強かったり、弱かったりするけど・・・」
と思われた方、
おみごと!!
台風は、海水温度の高い海上で発達して、内陸では弱くなりますので、
場所によって、設計で用いる基準風速が異なります。
季節風の通り道となる九州、四国、房総半島など太平洋側の地域は基準風速が大きくなります。
余談ですが、台風にかぎらずじつは地震も地域によって発生頻度の高いとろこがあるので、頻度によって係数が定められています。
太平洋プレートから離れた日本海側の地域や沖縄は、係数が小さく(頻度が低い)、太平洋側は係数が大きい(頻度が高い)傾向があります。
富士山のお膝元静岡などは、特に高いです。
台風に話を戻します。
ちなみに、東京〜神奈川あたりの首都圏では基準風速34〜36m/s を想定した耐風設計をすることになります。
九州、四国の太平洋側では、40m/s。内陸にある、関東甲信越などでは30m/s。
と、結構採用する風速にも幅がでてきます。
さらに、
地域によっては、「地域風」というものがあります。
夏季に吹く東北地方の「やませ」や、冬季に吹く群馬県の「赤城下ろし」などの強風がそうです。
これらは、じつは法律上では構造設計で考慮する義務はないので、個々の設計者の判断による部分となってきますので、注意しなければなりません。
(また余談ですが、東京の設計者が群馬の工場などを設計すると風に対する強度が不足したりすることがあります。地域特有の「赤城下ろし」などを知らないので、基準通りに設計してしまうことが原因であると思われます。)
地域によって定められた基準風速を元に立地条件などを考慮した係数などを乗じて設計風圧を計算します。
そもそも、この基準風速は何を基準に定められたかというと、
1934年に発生した、史上最大級の被害をもたらした「室戸台風」を基準に決められていました。
2000年に基準法が改正されて、現在は過去の台風などの強風の統計などから求めるようになりましたが、今でも、旧基準のほうが設計風圧が大きい場合は、安全側のため旧基準を用いることもあります。
台風が発生したときに良く聞くのは、
瞬間最大風速・・・という言葉です。
ここで、誤解しがちなのが、
瞬間最大風速と最大風速とは異なるものだということです。
瞬間最大風速とは、まさに瞬間に吹いた風速なので、突発的なものです。
最大風速とは、10分ごとに記録されている平均風速の最大値です。
設計で考慮するのは、後者の最大風速のほうです。
ちなみに、
「瞬間最大風速40m/sを記録」・・とか台風のときのニュースで言われますが、
40m/sだと人も車も吹っ飛びます。
「今日は、風が強い日だなぁ・・・」なんて日でも、せいぜい10m/s弱なのです。
竜巻は継続的に60〜100m/sの猛烈な風が吹き荒れるそうなので、これでは人も家もひとたまりもないですよね。。
風の特性を把握するには、流体力学の分野を学ぶ必要があります。
ちなみに、わたしは流体力学はよく分かりません。。あしからず。。
ただ、学生時代に横浜ランドマークタワーの耐風設計に携わった神奈川大学の大熊教授の授業を聞いて、建物を設計するうえで風を知ることもとても重要なのだなぁと思いました。
中でも、
「風直角方向振動」という現象があるのですが、
これは、風という自然現象の不思議がいろいろと凝縮されていて、勉強すると面白いです。
簡単にいうと、
風洞実験などの映像を見たことがある方は、分かるかもしれませんが、
風が作用する建物の面の後方に発生する渦(カルマン渦)の影響によって、
建物は、風が当たった面と直交する方向に大きく振幅をはじめる、という現象です。
なので、
高層ビルなどでは、風の吹いている方向の直交方向に大きく一定の振幅で振動しているのです。
(意外だと思いませんか?)
昔の高層ビルで耐風設計をされていないと、ビルで働く人達に船酔い現象が起きたりもするんです。
・・・
風はいろいろと奥が深いのです。。。
昔、
アメリカのタコマ橋は、強風が吹いていたわけではないのに竣工後間もなく落橋しました。
この失敗を教訓に、いろいろと風についても研究が行われてきました。
現在では、風の特性でもある継続時間の長さを考慮した、金属疲労の問題や、ダンパーなどを用いた居住性の改善など、日々研究が行われています。
とはいえ、
自然には逆らわないほうがいいですねぇ。。
(地震のときも、こんな終わり方だったような・・・)
長くなりすぎたので、
以上です。
思いついたことがあったら、書き足します。
相模原市南橋本のホテル改修工事で、
配管工を募集してます。
詳しくは、こちらからどうぞ
↓
http://www.tenpole.com/cgi-bin2/kanri/item/p0091.html
11月になりました。
朝方の寒さから、時の流れの早さを感じる今日この頃です。
あっという間に、クリスマス、大晦日、正月・・・となるのでしょうねぇ。。
鬼が笑うので、このへんにしときましょう(笑)。
さて、
これから、「設計者とクライアント(施主)」の関係について、また不定期ですが連載を
書いてみようと思います。
この関係性から垣間見える建築業界の問題点を考えます。
・・・
施主(せしゅ)は、クライアント(依頼主)と同義で使います。
施主は、建物の種類によっていろいろな場合があります。
たとえば、、
・住宅の場合は、個人
・マンションの場合は、デベロッパー(不動産会社など)
・オフィスの場合は、法人(企業)
・公共施設の場合は、地方公共団体(国など)
などがあります。
本日は、まず、住宅の場合について考えます。
建物を建設するときに、当然ながら施主がお金を出します。
小規模の住宅であっても数千万円という高額なお金を出すことになります。
個人の施主の大半は、住宅ローンを組んで買い物をする人生で一度の最大の
買い物であることが多いでしょう。
人生で一度きりの買い物である、「家」の設計なのだから、こだわりがあるのが
当然のことです。
「日当たりの良い家にしたい」
「広いリビングがほしい」
「使いやすいキッチンにしたい」
「部屋は〜室ほしい」
「中庭がほしい」
「屋上庭園がほしい」
・・・
などなど。
大きな決心をした後は、様々な要望、欲求がでてくるのは人として当然のことです。
コストを優先して、建売住宅やハウスメーカーの量産住宅を購入する方もいると思いますが、
今回は、施主が個人の設計事務所に設計を依頼する場合を考えます。
施主が、個人の設計事務所に設計を依頼するときは、「こだわり」がかなりある方が
多いと思われます。
大手ハウスメーカーの住宅展示場にもいろいろ通って、家具やキッチンについても
かなり下調べをして、自分たちが良いと思ったものを頭の中で「切り貼り」した状態で、
設計事務所に依頼するケースが多いかと思います。
このような場合、施主にとって設計者は、
「自分達の作りたい形を正確に理解して、作業してくれる人」、だと思います。
ここで、設計者側からこのような要望のある施主が依頼を持ってきた場合を考えます。
設計者といっても、これもまたいろいろですが、
・効率を重視した現実的(保守的)な設計者
・デザインを重視した革新的な設計者
大きく分けると2パターンの設計者がいます。
(三谷幸喜さんの「みんなのいえ」という映画の中でこのあたりのことが良く描かれています)
前者は、工務店お抱えのいわゆる専属設計者のようなタイプです。
施主の要望を考えながらも、
建設するときの作業性を考えたプラン、コストパフォーマンスの良さの追求など
が念頭にあることが多いでしょう。
後者は、若手デザイナーに多いタイプですが、
雑誌に注目されるような建物に興味の大半があって、施主の要望が自分の好みと
大きくずれていると、仕事を断るような設計者のタイプです。
いずれの設計者であっても、まず施主と顔合わせをして、まず施主の要望を
詳しくヒアリングすることから始まります。
こだわりの多い施主の頭の中にある「切り貼り」された理想の家は、実際に形にするのが
とても難しいことが少なくないでしょう。
施主がスケッチしてきた家のプランを元にして、打ち合わせを始めると、
1階と2階の階段の位置がずれていたり・・壁がずれていたり・・法規に適合してなかったり・・
・・・
大半は、失礼ながらめちゃくちゃだったりします。。
(この状態で、施主のほうに構造安全性など考える余裕などないと思われます。)
それを現実の家として形にしていく作業は、かなり難儀なものです。
さて、
ここから設計のベースとなる基本計画作りがスタートします。
基本計画は無料で行う設計者が大多数なので、施主も複数の設計者に計画作りを
依頼することが多いと思います。
この段階で、施主に対する設計者のサービスの質の違いが現われます。
つまり、「プレゼンテーション能力」の差が顕著にでる段階になります。
短時間で、良い提案ができることが理想です。
しかし、、
ここで、短時間で良い提案をしてきた設計者に対して安易に仕事を依頼するのは、
少し考えたほうが良いと思います。
それは、
設計の能力とプレゼンテーション能力とは別モノだからです。
この段階で、見た目に惑わされてしまう施主は現実的にかなりの人数いると思われます。
要注意です!
一生に一度の大きな買い物なのに、設計者にスピードまで要求すると後々ろくなことがないです。
これは、経験的にも間違いありません。
とは、言っても、のんびるすぎるのも良くないので、このバランスはとても難しいところです。。
家は、設計してから竣工(しゅんこう・・・完成の意味)するまでに、時間がかかるものなので、
気分が変わったり、飽きたり、もっと良いものを見つけてしまったり、で変更したくなるからです。
設計が終わって、工事が始まってからの施主からの要望で設計変更というケースは、
非常に多いです。
「図面を見て想像してたより、狭いから・・」とか
「新しい商品が発売されたから・・」とか
「雑誌を見てたらやっぱりこっちがいいなぁと思って・・」などなど
設計者にとって、施主からの要望はできる限り聞き入れなければならない
「鶴の一声」となります。
設計料を頂戴するわけですから、当然といえば当然です。
しかし、以前からブログでも取り上げているように、
設計報酬というのは、そもそも低いのです。。
なので、2度手間、3度手間となっていけば、それをサービスで行うことは困難になります。
手間が発生した時点で、設計者が施主に「変更設計料」を請求するのは、当然の権利ですが、
これがまた難しいのです。。
設計者も施主に喜んでほしくて設計をしますので、変更設計料の請求は間違いなく
設計者と施主との関係を悪くしてしまうものなので、設計者が請求を限界までガマンすることが
多いでしょう(中には大赤字になってしまっても請求できないお人好しの方もいます)。
これを見て、
「お人好しの設計者を探せば、変更し放題だ!」と思った、新築を計画中の施主がいましたら、
設計者としては、とても悲しいです。。
誤解を恐れずに、申しますと、
そのような考え方が、耐震偽装事件の根底にある一番大きな問題であると認識してください。
良い家は、安くはありません。
良い家は、早くはできません。
メディア等の情報に惑わされないようにしてほしいと思います。
現状は、構造設計料も設計者(意匠設計者が大半です)の設計料から支払われるので、
変更に対する構造検討費用も当然ながら払われないことが多いです。
このようなことの積み重ねが、安全性を脅かす建物を多く作り出していることを、施主の方々にも
もっと認識してもらう必要があります。
(一般的な、木造2階建てはこれまで構造設計の義務がありませんでしたので、確認申請後の
変更設計が多々行われていることが多いと思います)
常識的なモラルの問題だと思いますが、いざ当事者となると、安く、早くを求めてしまうものです。
個人的には、
飲食店に入ったときに、メニューを見て全部0円だったとしたら、、
わたしは、ちょっと怪しくて注文する気になりません。お腹が痛くなったら嫌ですし。
(分野が違いますが、問題になっているソフトバンクの予想外割なんかも、どうなんでしょう・・
シェアを拡げた後に強みのコンテンツ利用料等でペイできる公算なのでしょうけど・・)
わたしは、安くて早くて美味い「吉野家の牛丼」が大好物です(でした)。
でも、一生に一度の買い物だとしたら、「吉野家の牛丼」では嫌です。
「吉野家の牛丼」でも良いという施主は、ハウスメーカーの量産型の住宅や、
マンションを購入したほうが懸命だと思います。
・・・
まだまだ、いろいろと書きたいことがあるのですが、長くなりすぎました。。
それだけ、設計という仕事の背景にはいろいろあるんです。
きりがないので、今回は以上です。また書き加えたりしていきます。
次回は、施主がデベロッパー(不動産会社など)の場合のマンション編です。
もっと、いろいろと書くことがあります。。。