テンポールトップページへ

2006年10月アーカイブ

分譲マンション設計業務のお仕事情報です。

詳しいお仕事内容は、ホームページの新着お仕事をご覧ください。
(上部バナーのテンポールロゴをクリック!)
↓または、、
http://www.tenpole.com/

確認申請について

| コメント(0)

またまた、以前連載した「一級建築士制度を考える」の不足していたことについて書きます。
世間でも話題?の確認申請についてです。


このあいだ、イーホームズ藤田社長の爆弾発言が話題になりまして、当サイトでもソース元のブログを
リンクしました。かなり、きわどい内容のものでした(興味のある方は、こちらから。)

内容の真偽は、未だ断定できるものではありませんが、マスコミの大半が黙殺しているところから考えると、個人的にはマスコミ側の情報操作がありそうな気がします。
(殺人事件をドラマティックに演出している時間があれば、藤田発言をもっと調べたほうが視聴率も取れるはずですしね)


さて、それは置いておいて、

今回の問題の発端である、「確認申請」について考えてみたいと思います。

わたしが、構造設計を始めて行ったのは6年前で、当時は民間が確認申請を行うことはほとんどありませんでした。建物を建てる場所の管轄のお役所の仕事でした。

当時は、
「世田谷区のあの構造担当はうるさいから、気をつけろ」、とか
「渋谷区は楽勝だよ」、とか
「群馬の構造担当は素人並みだったよ」、とかとか
その場所によって、いろいろと情報を集めたものです。

誤解を招くといけないので、断りますが、、
これは構造設計者が誠意をもって設計を行った仕事を前提にしています。
いわゆる、「性善説」です。

なぜ、こんな情報を集めるかというと、
やはり、設計者にとって確認申請というのは手間のかかる書類作りが多いので、
できるだけ迅速に行いたいものなのです。
設計に自信のある人ならば、それは尚更でしょう。

「なんで、おれの設計を役所の素人にケチつけられなきゃいけないんだ!!」

などと、
役所の窓口で、口喧嘩をしている設計者を見たことは一度や二度ではありません。。

確認申請は法律上必要なのですが、設計というのは確認申請書類で全てが分かるほど単純ではありません。どちらかというと、確認申請は「形式的」な書類なのです。

わたしも、確認申請書類を作るのは嫌いです。。
「構造的に成立している建物なのに、わざわざなんで計算書なんか作らないといけないんだよ。。」
・・・
目が回るほど忙しいと、いつもこんなふうにぼやいていました。。

つまり、一般的には、
設計者にとって、確認申請というものは重要なものではないのです。
なので、業界の慣習として、、

「とりあえず、確認だけとっちゃえよ。」
・・・

みたいな事が言われたりします。

これは、どういうことかと言うと、

確認申請の審査をパスすれば、法律上、建物の建設を着工することができます。
つまり、
早く着工することで、一番大事な作る過程に時間をかけることができるわけです。
ゼネコンやデベロッパーにしてみれば、着工を早くすればするほど工期短縮、早期販売とメリットしかないということになります。
この元請けがメリットを享受するためには、下請けの尻を叩いて早く確認申請許可証を取る必要がありますので、このような事でも元請けによる下請けに対するプレッシャーはあるんです。。

この点については、また今後取り上げていきます。

さて、

早く確認申請許可を取りたくても、審査担当者の裁量次第では、時間がかかることも当然あります。

わたしの経験上ですが、、

役所の構造担当者については、構造のことについて精通している担当者は1割程度でした。
大半は、構造に詳しくない方が多いです。
それどころか、、
地方に行くと、
「わたしは、今年から構造審査科に配属されたので、全く分からないんです。。」
・・・
は?
・・・
といったことも多々ありました。

逆に、こちらから計算の意味を教えてあげたりしました(笑)。

これは、紛れも無い事実です。

ただ、わたしたちにしてみれば、これは当然のことだと思います。
役所の方の大半は、設計業務はしないので、無理もありません。
公務員試験に合格して、確認審査科に配属されて、「はい、あなたは構造担当ね」って感じでしょうからね。
役所で審査だけをして、構造が理解できるほど、構造設計という仕事は甘くありません。

「性善説」に従えば、教科書通りの構造に詳しい役所の担当は、逆に迷惑なんです。
設計というものは、教科書通りにはいかないものだからです。
わたしも若い頃は、融通の利かない担当者と口喧嘩をしたこともあります(笑)。

以前、建築基準法について書きましたが、法律自体が万全ではない状態なのに、
その法律に対して「法の番人」として、役所の方が頑張ってしまうと、良い建物は作れないんです。

これは、結構重要な問題なんです。

確認申請業務が役所だけだと、人材が限られるのと時間がかかることから、民間へ確認申請業務を開放するという建築基準法改正が行われました。

わたしが、実務を始めて2年目には民間の確認申請機関の名前が次々とでてきましたので、2003年頃からは、確認申請は役所から民間へ普及しはじめた頃だったと記憶してます。

日本ERI
イーホームズ
ユーイック
ビューロベリタスジャパン
TBTC
・・・

いろいろな民間審査機関が登場しました。

当初から、私たち設計者にとって、民間の確認審査機関はとても好評でした。
・審査が早い(5時で仕事が終わらないなど・・)
・融通が利く
などが主な理由です。

書類訂正をFAXやメールで受け付けてくれたりもして、とても便利になりました。

そのうちに、、
建主(デベロッパー含む)から、確認審査機関を指定してくることが増えてきました。
今思えば、確認審査機関の設立に出資している関係があったのでしょう。

民間の確認審査機関の会社の打ち合わせブースは、いつも大盛況で、要予約でないと受け付けてもらえませんでした。

そうこうしているうちに、雑誌広告での露出や、上場する会社が現われたりしたので、
「確認申請って、儲かるんだなぁ・・・」
なんて思いました。

ここまで読んで状況は推測できるかと思いますが、
民間の確認審査機関は、大繁盛、大忙しだったと思います。
なので、時間が経つにつれて、
「確認申請を審査するためのマニュアル」のようなものができて、
比較的知識のない人にも、審査をさせざるを得ない状況になっていたと思います。

その証拠に、

わたしが、当時提出していた確認申請書類に計算ミスを自分で見つけたので、
書類を差し替えようと担当者に電話をしたところ、開口一番に
「あっ、あの物件の構造審査はもう終わって、もう消防に回してますから・・・」
と言われました。。

まぁ、自分で計算したから気づいた程度のミスなので、
審査する側からしたら、分かるわけはないだろうとは思いながらも、
「??」と思ったのは記憶にあります。
(ちなみに、計算書にミスがあっても、施工段階でちゃんと修正すれば当然ながら問題ありません)

「性善説」によれば、施工で修正すれば大丈夫なのですが、
「性悪説」によれば、ばれなきゃ大丈夫となってしまうので、
構造計算を偽造するという行為の下地は、たしかに存在していたと思います。
わたしには、怖くて考えられませんが。。

その後、昨年の11月に「耐震偽装事件」として、確認申請は世の中にクローズアップされることになりました。

ここまで読んで頂ければ、民間の確認審査機関だけが、責められるような問題ではないことが当然ながらご理解いただけると思います。

建築業界の全体的な歪みが産み出した問題に他ならないのです。。

この点を間違えずに、議論をしてもらいたいと思います。

政治家の先生方も、この問題を党同士の喧嘩のネタにだけするのは是非是非止めて頂きたい!!と懇願致します。。


イーホームズ藤田社長は、
ある部分では、被害者であると思います。
ですが、
ある部分では、キャパオーバーとなった業務を止められなかったことに対する責任があります。

法改正が産んだ「民間確認申請バブル」の渦に巻き込まれてしまったのかもしれません。。


気づいたら長くなってました。。

以上です。

新着お仕事情報の宣伝です。

準大手ゼネコン建設現場でのお仕事情報です!

東横線武蔵小杉駅の目の前が勤務地です。

・現場事務所での事務員募集!
 50歳くらいまでOKです。

・施工管理者募集!
 1〜2年の建築施工管理経験者の募集です!

詳しくは、当社ホームページをご覧ください。
先着順で面接を行いますので、お申込みはお早めにお願いします。。

http://www.tenpole.com/

今週の日経アーキテクチャーに地震の新しい評価方法の特集がされていました。
「建物に伝わるエネルギーは阪神大震災の何回分か」という記事です。

以前、地震の震度についてブログで簡単に書きましたが、
地震に関しては、わたしが大学院で研究していた制振構造と密接な関係がありまして、
ちょっとばかりうるさいです(笑)。

今回の記事を簡単かつ大胆に言うと、

「震度とか、マグニチュードとかだと分かりにくいから、阪神大震災のときの地震を
基準にして、阪神大震災の地震を何回分っていう言い方にすると分かりやすいでしょ?」

というものです。。

なので、
阪神大震災より小さければ、
たとえば、阪神大震災0.7回分。
阪神大震災より大きければ、
たとえば、阪神大震災2.2回分などとなります。

たしかに、分かりやすく良いと思いますね。

以前のブログでも書きましたが、
地震の強さというのは、評価が難しいです。

たとえば、強さというのも
「ドーンッ!!」という瞬間的な強さと、
「ユッサユッサ・・・」という継続的な強さとは違いますよね。

強さは工学的に曖昧な表現なので、エネルギーという単位で
考えるといろいろと分かりやすくなります。

エネルギーは人でいうとカロリーと同じようなものですので、
イメージはしやすいと思います。

エネルギー = 力×距離
が基本です。

重たいモノを持って、長時間歩くと疲れます。
エネルギー(カロリー)を消費するわけです。

しかし、

重たいものを思いっきりパンチしてみると、
ちょっと動くかもしれませんが、ほとんど動きません。

これはエネルギーをほとんど消費していないことになります。

つまり、
地震については、言葉のイメージに反して
「ドーンッ!!」は、エネルギーとしては小さい。
「ユッサユッサ・・・」は、エネルギーとしては大きい。

ということがあるのです。

阪神大震災はいわゆる直下型地震でしたので、「ドーンッ!!」型です。

なので、観測された加速度(820ガル)のわりにエネルギーは大きくない地震でした。

つまり、
今回の新しい阪神大震災の何回分かで評価する方法で誤解してはいけないのは、
その地震の被害や規模から推測してはいけないということです。

わたしは、専門なので分かりますが、これは世間に誤解を招く恐れがありそうだな、、
と思い朝からブログを書いている次第です。。

これ以降は、ちょっと専門的なこと書きますので、
興味ない方はホームページをご覧ください(笑)。

・・・

ここまでだと、まだちょっと矛盾がある部分もあります。
ここで、以前ブログでは割愛した「固有周期」という考え方について書きます。

人は、気の合う人、合わない人ってありますよね。
わたしは、これも人の「固有周期」だと思っています。

気の合う人といっしょにいると、気持ちが良く、自分の能力以上のことができてしまったりします。
一方、気の合わない人といっしょにいると、気分が悪く、自分の能力を発揮できなかったりします。

なので、人の心は、「波」のようなものなのだと思います。
同じ振幅の波がきて、合わされば増幅しますし、

np1.jpg

同じ振幅でも位相の違う波と合わされば打ち消されます。

np2.jpg

ただ、
人の心はこんなに単純ではありません。
人の性格にはいろいろな要素が含まれていてそれが複雑に絡まりあったものだと思います。
↓こんなイメージです。

np3.jpg


この図を一度は見たことがあるのではないでしょうか?
・・・

そうです、地震の波形もこのような形になります。

つまり、地震とは様々な特性が複雑に混ざった波です。
混ざっていながらも、必ず特性の強い部分があります。
それを、「固有周期」などと呼んでいます。

これは、人でも同様ですよね。
「あの人、仕事では厳しいけど、普段は温厚で基本的にやさしい人だよねー」
なんて、言いますよね。
つまり、この人は「基本的に優しい特徴を多くもった人」という「固有周期」を持っているということです。

地震にも人にも固有周期があればもちろん、建物にも固有周期があります。

地震の場合、人とは異なり固有周期の合う建物を助けてはくれません。。
逆に猛烈に攻撃する特性があります。

地震の固有周期と建物の固有周期が合致してしまうと振動が増幅されて、
建物が想定していた以上の外力を受けて崩壊に至ることがあります。

得に、阪神大震災の固有周期が阪神淡路地区にある商業ビルや、高架道路などの
固有周期と合致してしまったので、見た目でも大きな被害を与えた印象があります。

どのような地震が今後くるのかは誰も分かりません。。
しかし、昔々とても頭の良かったフーリエという人が、複雑な波の特性を計算する方法を
見つけました(フーリエは、ナポレオンに従軍もしていた、数学・物理学者です)。
複雑な波のデータをフーリエ変換という計算をすると固有周期が分かるのです。
(ちなみに、MP3データ圧縮方法でフーリエ変換の技術が内部で使われているのは
有名な話です。)
なので、過去の巨大地震特性からどのような固有周期を持つ建物だと、危険なのか?
という解析が日々研究されているのです。

現在は、コンピューターシュミレーションで固有周期のない(どんな建物にも強力に作用する)
模擬地震波のデータを作成して、ある一定規模以上の建物の場合は、その地震波データをもとに
特殊な構造解析を行うことが義務付けられています(これを、時刻歴応答解析と言います)。

地震から、固有周期、現在の構造解析方法とまでざっと説明できました(汗)。。

最後に、
日経アーキテクチャーの記事の最後のほうで書かれている論文のタイトルについて、
懐かしいのでちょっと書きます。

秋山教授と北村教授(ご両名ともわたしの研究テーマの参考文献などにも度々登場する
すごい方です)が、今回発表した論文「エネルギースペクトルと速度応答スペクトルの対比」
というのは、
地震波をフーリエ変換したときに得られる固有周期帯(フーリエスペクトル)と、
その地震による応答値帯である速度応答スペクトルが一致する傾向があるという事実に
基づいて書かれているものだと思います。

また、地震のエネルギー(被害状況と比例傾向がある)は、地震の応答速度スペクトルから
推測が可能であるという秋山教授の理論から、いろいろとケーススタディされたものだと思います。

昨年、構造計算方法に「エネルギー法」という新たな計算法も加わりましたので、
わたしとしては、これまで説明しにくかった問題もこれでだいぶ説明できるのではないか?
と期待しています。

たまには、専門的なことも書いて頭が昼寝しっぱなしにならないようにしたいと思います(笑)。


※日経アーキテクチャーは本屋さんでは売っていません。当サイトのリンクから購入(年間購読)できます。

ヤフーニュースでも出ましたが、

耐震偽装問題に新たな展開があるかもしれません。。

これ以上建築業界のイメージを悪くしてほしくありませんが、、
今回の爆弾は大きそうな予感がします。。

詳細内容はこちらのブログをご覧ください。

http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2006/10/post_5af2.html


困ったものです。。

また、「一級建築士制度を考える」の連載で不足していた内容についてです。。

耐震偽装事件の発端になった原因の背景になにがあるのか?については、連載でもいろいろと書きました。ですが、そもそも構造設計者そのものにはどのような問題があるのか?についても書かないと責任転嫁のように見えてしまいますよね。
自分の専門ということで書きにくいこともいろいろありますが(笑)、ちゃんと書きますよ!

構造設計者に対するイメージは、見事にA氏が作り上げた部分があります。
職業を説明するのに、「A氏のあれです」というと大抵の人は「なるほどねぇ〜」とうなずきます(笑)。
便利やら、情けないやら、複雑な心境です。。

構造設計者は、縁の下の力持ち的存在で表舞台にはなかなか登場しません(でした)。
なので、建築家に比べれば地味だし、地味な分若者達から見れば魅力の少ない存在でしょう。

なぜ、構造設計者は表舞台には出ないのでしょう?
個人的には出ればいいのにと思いますが、表舞台に出ることを好まない人達が多いような気がします。
一般的に、
建築家=目立ちたがり屋
構造家=控え目
な場合が多いと思います。

建築に限らず、これはどの業種でもエンジニアそのものの特性のような気がします。

以前、NHK?のロボットの開発ドキュメント番組を見たときも、そのように感じました。
番組に呼ばれたロボットの外観をデザインしたデザイナーが、司会の二人にVTRを見ながらロボットの開発経緯を説明するような番組でした。その番組で実際にロボットを設計したエンジニアが映ったのは数十秒で、あとはデザイナーが技術的な部分まで話をするのです。

わたしは、この番組を見て、
「このエンジニアはこれで満足なのか?」と思いました。
番組を見た人は、きっとロボット開発の功績の大半を、番組で説明していたデザイナーの功績と思うはずなのに。。

控えめなエンジニアの特性を示す良い例だと思います。

構造設計者についても、このことはとてもよく当てはまると思います。
構造設計者が控え目なのには、理由があると思われます。以下に理由を書いていきます。

1.構造設計者の大半は難しいことを簡単に説明する能力に欠けるから。

なぜなら、難しいスキルを身につけるために努力してきたので、自分の商売道具を簡単な言葉である意味安売りしてしまうのような発言ができないのだと思います。なので、難しいことをより一層難しくしてしまうように話すエンジニアも少なくないと思われます。
目立ちたがり屋の構造設計者もいると思いますが、専門家にしか分からない話をメディアで長々とされても困りますよね。敬遠されるのは、当然です。
つまり、構造設計者の興味(極めて専門性の高いこと)と、世間の興味のギャップがあるのを知っているので、「表舞台で話しても意味がない」、「分かる人だけ分かればいい」となっているように思います。
当然ながら、簡単に話すことも限界がありますが、世間から乖離した世界で居心地が良いと感じる人達が多いのは事実だと思っています。

2.これまでの建築士法では、構造設計者に最終的な責任が至ることは法律上なかったから。

このような制度上の問題も大きいと思います。構造設計者は、これまでは無資格で行えた仕事です。建物の規模によらず、ある意味誰でも構造設計できたのです。なので、構造設計者には、一級建築士を取得する意欲のない人も少なくありません(パソコン性能の発達によって、構造計算ソフトも使いやすくなり、ソフトを覚えれば構造設計ができるという風潮があるのも問題です)。とは言っても、資格とエンジニアリングは比例しませんので、無資格でも高いスキルを持った方も多いのは事実です。
ただ、資格の意義をもっと考えるべきではないかと個人的に思います。
資格を持たなければ、法律上は最終責任は元請け(大部分は意匠設計事務所の建築家など)が取ることになります。エンジニアとしてプライドがあるのならば、法律上も責任を問われる有資格者となるべきだと思うのです。責任を問われる立場になれば、当然ながら責任を取れる仕事を選別する必要が生じます。それが、重要だと思います。以前ブログでも書いたように、下請け業務から脱却するための最低条件だと思います。

3.怖さに打ち勝つ勇気がないから。

これは、自分に言い聞かせる部分でもあります(汗)。。
構造設計という仕事を始めた当初はとにかく何もかもが怖いです。
「この床落ちてこないかな・・・」
「この柱つぶれないかな・・・」
「地震がきても壊れないかな・・・」
などなど
初めて手がけた建物が竣工してから、しばらく夜寝付けない日々が続くほどでした。
これは、モノの性能を数字的に知っているから怖くなるのです。構造設計は基準に従ってある前提で設計を行うので、その前提を超えたことが起これば壊れることも有り得るからです。
そこで、登場するのが建築家(デザイナー)の存在です。
建築家は良い意味でも、悪い意味でも知らないのです。
知らないから、奇抜なデザインを簡単に提案してきます。素晴らしい建築家は、構造設計者が怖がっているのを知って、「大丈夫!やってみようよ!」と私たちの背中を「ポンッ」と押してくれる方もいます。そうすることで、構造設計者がまた一つ成長できるという部分も多々あります。
要は、怖さを知りながらも限界を設けずに自分でチャレンジしていけるだけの素養を身につける必要があると思っています。そうしないと、いつまでも現在の地位に甘んじることになるからです。

4.建築が好きではない人が多いから。

これは、嘘みたいですが結構多いです。
建築設計の分業制が常識となったためこのような状態になっているのだと思います。たしかに、現状は構造設計業務に特化すれば、建築が好きじゃなくてもこなすことはできると思います。ただ、それではあまりにも寂しいですよね。。わざわざ給料の安い仕事を選んだのに、夢までない人が多いとしたら業界の評価が下がるのは当然です。

建築は好きだけど技術のないデザイナー。
建築は興味ないけど技術のあるエンジニア。

こんなちぐはぐなバランスがぎりぎりのところで取れてしまっているのが現状の建築業界だと思います。
わたしは、どちらかというと前者に可能性を感じます。本当に「好きこそものの上手なれ」だと思うからです。まぁ、わたし自身も勉強中なので前者にはいるのかもしれないですね(笑)。

以上です。

最後に、以前JSCAで行われたセミナーで某有名デベロッパーで話題の建物の構造設計を担当した方の講演を聞きました。以下は、その方のお話の一部です。

「まぁ、会社からお給料をもらいながら、面白い形態のエンジニアリングにチャレンジできるのって楽しいですし、得だと思いますね。ラッキーってかんじです(笑)。・・・」

わたしは、この講演者に対して本気で文句を言ってやろうと思いました。が、講演会が終了時間を過ぎても終わらなくて、次の予定があったので中座してしまいましたが。。
こんな人達が現在の構造設計者のトップ扱いされているからダメなんです。本当にがっかりしました。


構造設計者にも改善するべき部分は多いと思っています。
偉そうなことを言った手前、わたしも有言実行するべく努力していくつもりです!

地震のはなし

| コメント(2)

朝方、関東で地震がありました。

千葉県で震度4、東京、神奈川は震度3くらいでした。
(ちなみに、わたしは横浜在住なので震度3でした。かなり揺れました。。。)

構造設計が専門なので、ここでちょっと地震のはなしをしてみます。

地震があると、みなさんはテレビをつけて地震速報で「震度」を確認しますよね?
そもそも「震度」ってなんでしょう??

じつは、わたしも良く分かりません。。
「震度」は、とても漠然とした基準だと思います。

わたしの中の「震度」はたとえばこんな感じです。

震度3・・・揺れるけど大丈夫
震度4・・・かなり揺れるけどまぁ大丈夫
震度5・・・怖いくらい揺れるけどなんとか大丈夫
震度6・・・死ぬかと思った、ガラスが割れた
震度7・・・パニック!!、大被害

といった感じです。

大きめの地震が発生した場所で構造設計した建物があったりすると
翌日は電話がかなり鳴ります。

「この建物は震度xxまで大丈夫なの?」
「廊下にひびが入ってるけど、大丈夫?」
「アスファルトに大きなひびが入ったけど、建物は平気?」
などなど。

阪神大震災や、新潟地震のような巨大地震の場合は別ですが、
ひび(クラック)に関しては、大抵の場合は全く問題ない場合が多いです。
地震が来ると普段気にもならなかったものが、目につくようになるものなんです。
「これは地震の前からあったものだと思いますよ」
なんてことが多いと思います。

この中で、
「震度xxまで大丈夫なの?」
という質問は構造設計者泣かせなのです。。

気象庁が決めている「震度階」は極めてざっくりしていてアバウトだからです。

構造設計をするときは、「震度」ではなく「加速度」で設計するのが一般的です。
聞いたことある方もおられるかもしれませんが、「ガル(gal)」という単位です(最近はSI単位系になったので、使わない傾向があります)。

つまり、構造設計者にとって「震度階」と「加速度」の対応がどのようなものなのか、
統一された見解が微妙なかんじなのです(いちよう学会などで出している目安はあるのですが、工学的な意味づけが少ないのであまり参考になりません)。

昨日ブログで建築基準法のことを取り上げましたが、建築基準法の解釈を震度階に置き換えるということが行われたのは最近のことです。

なので、建築基準法に準じて構造設計をすれば、震度6強の地震までは建物が倒壊するまでに人命を守ることが可能である。。という見解になってしまいます。

「じゃあ、震度7が来たらどうなるの?」
という質問が必ず来ますが、、
これは、正直答えにくいのです。。

歴史的な大地震で、研究などでも頻繁に使われる観測データのある代表的な地震波で比較すると、

エルセントロ波・・・340ガル
タフト波・・・175ガル
八戸・・・225ガル
神戸海洋気象台・・・820ガル

いずれも、震度6〜7クラスの大地震ですが、かなりバラツキがあります。
この代表的な地震波の加速度で震度階で分類したら神戸は震度9くらいになっちゃいそうです。。
でも、実際はそういうものでもないのです。
それには、固有周期という考え方を取り入れていくとちょっと分かってくるのですが、ここではマニアックになるので止めておきます。。

構造設計って奥が深いんですよ。。

とにかく、一般的に知られている地震の知識だと、説明ができないくらい地震というのは訳が分からないのです。。まあ、自然には逆らわないほうがいいですね。

ちょっと、いい加減なまとめ方をしたので(汗)、、実用的なことを最後に書きます。
構造種別ごとの構造的な長所、短所です。参考にしてください。

木造の場合:
 長所・・・軽い
 短所・・・耐震性能悪い、防火性能に劣る、3階建ては台風でも揺れる

鉄筋コンクリート造(RC)の場合:
 長所・・・耐震性能が良い(低層の場合は強い)、防火性能極めて良い
 短所・・・耐震性能が悪い(中高層の場合は脆い)、重い

鉄骨造の場合:
 長所・・・耐震性能が良い(全般的に良い)
 短所・・・揺れる、防火性能は悪い(500℃程度で軟化)

鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC):
 長所・・・耐震性能極めて良い
 短所・・・重い

注1)例外の工法もあります。
注2)コストや居住性能は評価してません。

以前ブログで取り上げた「一級建築士制度を考える」の連載で、一部説明不足があったので取り上げたいと思います。建築基準法についてです。


「これは法律だから・・・」、と言われると妙に説得力がありますよね。
良いアイデアが浮かんで、やってみよう!と思ったときに「いや、法律に違反するから無理」と言われれば無条件に断念するでしょうし、この企画ちょっとやばいんじゃない?なんて思っても「法律には触れないから平気だよ」と言われれば、やってみるか!となることもあるかと思います。

法律は社会を構成する基本的なルールです。法律の内容の半分くらいは常識的に判断できることもあります。
ですが、ルールを知らないと、悪気はないのに思わぬところに落とし穴があったり、逆にルールに精通していると人の行かない裏道をも迷わずに真直ぐ歩けてしまったりします。。
つまり、法律は勉強しないと損をするわけです(元ライブドア社長が外国人記者クラブで言っていたことと、通じるものがあると思います)。

どんな法律でもよいのですが、法文自体を実際に読んだことがある方はどのくらいいるでしょうか?
わたしが建築基準法を読んだ感想ですが、「まどろっこしくて、分かり難くて、日本語とは思えない」でした。。
省略や、二重否定(肯定)や、告示、条例との関係性、、とにかく読みずらいんです。。

一級建築士試験では、法規の試験は法令集持込が許されてますので、高得点ができる科目なのですが、だからと言って、一級建築士は法律に明るいかと言うとそうでもない人が大多数だと思います。
なぜか?
それは、建築の実務と現実にはかなりのギャップがあるからです。
法律には、矛盾や非効率が多く、いわゆる「キレイゴト」である場合が少なくないんです。。
特に、現在の商業主義的な建築業界では「キレイゴト」を守って効率を落とすようなことは実際問題として行われません。
時は金なりなのです。

建築基準法と言っても様々な分野を網羅しているので多岐にわたりますが、ここでは昨今問題となった「構造」の分野について取り上げます。

みなさんは、自分の住んでいる建物が「建築基準法を満足している」と専門家から言われたらきっと安心されることでしょう。「これで、地震がきても一安心だなぁ・・・」とほっとされるでしょう。下手をすると、専門家が太鼓判を押したことで、万が一のときの対策を怠ってしまう人もいそうな気がします。

結論から言うと、建築基準法は「建物の安全性を保障する」ものではありません!
これを聞いて「えっ?」と思う方が多いのではないかなと思います。不安を煽る訳ではありませんが、そうなのです。

簡単な例で言うと、
「建築基準法を満足する建物」は、
震度6強の地震に対して建物が崩壊するまでに人命を守ることを最低限の基準としています。つまり、建物は崩壊する危険性があるわけです。幸い崩壊しなかったとしても地震の後にその建物を継続して使用することは難しいでしょう。余震等での崩壊の危険性があるからです。

上記は、正確に言うと「建築基準法をギリギリ満足する建物」の場合ですが、大抵の建物は経済設計を求められるので、ギリギリ設計の建物は世の中に意外と多いと思われます。
これを見て、みなさんはどう思いますか?
幸いながら命が助かったとしても、命の次に大事なくらいの財産である建物は失う可能性はあるのです。

耐震偽装事件で、1.0に対して0.5だとか0.75だとか、いう数字が登場したのは記憶に新しいと思います。この数字が「1.0」のときまさに「建築基準法をぎりぎり満足する建物」となるわけです。なので、「1.0」だったからといって建物の安全性が保障されるわけではありません。
(構造の専門家の立場から言うと、この1.0とか0.5とかいう数字の論議は実は、極めて難しい要素を含んでいます。構造計算は誰がやっても同じ答えになるものではありません。また、計算プログラム自体が決して万能ではないというのが実情です。設計者によっては、プログラムの使用を嫌って独自の理論で計算を行う人もいます。これは、本当に難しいことなのでまた今度ブログで取り上げます。)

これを見て、「地震の後に建物が使えなくなったら困る!」と思った方は、現在住んでいる家、建物、もしくはこれから新築しようとしている建物について考え方を変える必要がありそうです。

この法律の解釈を難しくしている要素の一つに、「確率論における地震」の存在があります。
50年に一回くるか、こないか、それとも100年に一回なのか・・・考えるときりがありません。
そんなこと考える余裕があったら、目先の工事金額を節約したほうが良いという考えもあるでしょう。わたしは、それは個人の自由で否定はしません。ただ、専門家である私たちはあらゆる可能性を視野にいれてクライアントに接する必要があると思っています。法律を満足するのなら、万能であると考えるクライアントも少なくないと思います。

書きながら、この問題もいろいろと思うところもあり長くなりそうです。。
連載はいまはしんどいので・・(前は仕事お休みしてたので・・)、またの機会に取り上げたいなと思います。

結論は、
・建築基準法は万能ではない
・法律は勉強しないと損をする
ということです。

わたしもまだまだ勉強中の身ですが、このことは継続して勉強していきます。

建築業界の今後

| コメント(0)

人材派遣事業をはじめていろいろと勉強しながら建築業界の今後について考えています。

未来のことを考えたとき、当然ながら現状の問題点を抜きにして語ることはできません。
建築業界の現状の問題点は、以前ブログでも書きました(こちらからどうぞ)。

第一に、低水準の報酬(低収入)を問題点としてあげました。
建築設計という職業および職能というものは報酬を低くしなければならないほどのサービスしか提供できないものなのでしょうか?
自分が身を置いている業界であるということを抜きにして、客観的に冷静に考えて、それは違うと思います。逆に、設計という職能は極めて高級なサービスの一種であると思います。
ただ問題なのは、その設計の質を見極めることができる人がとても少ないということだと思います。実はそのくらい、高い技術、深い配慮を要する職業であると思います。

バランス感覚(都市景観、近隣との調和、コスト感覚)、
広範な一般常識(土地の気候、風土、地盤条件、インフラの整備状況)、
技術(構造的な知識、設備的な知識、自然現象の熟知)、
センス(デザイン、動線、トレンドの把握、最新商品知識、風水学)、
配慮(防火対策、防音対策、漏水対策、非難経路)、
アフターケア(メンテナンス方法、クライアントとの対話、ヒアリング)
などなど・・・

設計者に要求される能力は極めて広範で、きめ細かい配慮が必要な決して誰にでもできるような仕事ではありません。

では、なぜ報酬が低いのでしょうか??
それは、先に述べたように、設計の質を見極めることはかなり勉強しないと難しいのです。。
設計者と同様程度の知識を持たないと、設計者の細かい配慮は理解されません。
なので、厚化粧された建築(視覚的な建築)に興味を奪われてしまうのです。

厚化粧は、お金さえかければそれほど難しいものではありません。厚化粧にもセンスは要求されますが、それは設計者に要求される能力のほんの数パーセントにすぎません。視覚的なインパクトを追求することで、クライアントを手っ取り早く捕まえることができ、メディアにもアピールし易く、そして最も重要な設計そのもののハードルを低くすることができます。

これが、まさに現在の建築業界であるとわたしは考えます。

商業主義が生んだ産物です。

「じゃあ、おまえはなんで人材サービスなんて最も商業主義的なことやってるんだ!」
なんてお叱りを頂いてしまいそうですが、、
個人的には、答えは見つけているつもりです。。

歪んだ業界では、労働力と雇用のバランスがとても崩れているものです。
人に例えれば、栄養過多になって脂肪がつき過ぎて代謝が悪く病気がちになっている状態かなと思います。
代謝を良くするためには、血行を良くする必要があります。運動をしたり、食事に気をつけたり、ストレスをためないようにしたり方法はいろいろあります。
建築業界にとって、血行の流れを良くすることは、お金の流れを良くすることにつながると思います。
つまり、労働力と雇用のバランスを整えてあげる必要があるのです。

わたしは建築が好きです。人一倍好きな自信があります。理由は分かりません。。好きなんです。
しかし、建築が病んでいる今、好きだからと設計を続けていても信念とは違う大きな力に間違った方向にどんどん進められてしまうような気がします。
病気のとき、好きな食べ物を食べてもそれは病気の元(ウィルスや悪性の細胞など)に餌を与えてしまうということと同じです。病気のときはガマンもとても大事なんです。

以前ブログで、制度で報酬の最低水準を設けることを提案しました。
これは、本音を言うと、建築の病み方が末期的なのでカンフル剤を使わざるを得ないという意味です。
人の体も理想は自然治癒です。ですが、現状は自然治癒を期待できる状態になるまでに時間がかかりすぎて逆に危険だと思うのです。

カンフル剤を投入しつつ、人材の流動性を高めることが、建築業界の血行を良くする治療のひとつだと考えています。なので、治療の効果が見えてくれば、当然ながら大好きな設計にもっと力を入れていきたいというのがテンポールの思想です。

ひとりよがりかなぁ・・とたまに悩みますが、最近はこの思想にも自信を持ってプレゼンできるようになりました。

みなさまのご意見もお聞かせ頂ければ幸いです。

ひとり言です。。

人材ビジネスを起業して思ったことです。
現在も準備しながらテスト営業をしてますが、
どうも、人材ビジネスはイメージが悪いですね。。

たとえば、
「人集めのピンハネ業だろ」とか、
「人材派遣業って特別なスキルいらないだろ」とか、
「仕事をしたい人を食い物にしてる」とか、
などなど。。

ある程度は予想していたことですが、現実を目の当たりにすると
なかなか難しい問題のような気がします。

実際わたしも学生時代に人材派遣会社でスタッフ登録をして
夜勤10時間の仕事で日給8000円の仕事をしていた経験も
あるので、「ピンハネ業」というイメージは自身にも強くありました。

ただ、、
現在の派遣会社は一昔前と比べて「ピンハネ」とは程遠い利益
で頑張っている会社が多いと思います。
法律も整備されましたし、競争も激しくなっているので必然的に
薄利多売的な営業にならざるを得ない状況だと感じます。

人材派遣会社の平均的な粗利益率が20〜25%程度なので、
これだと小売業のほうが割りが良いくらいだと思います。
当社も、3年後の黒字転換と、最大累積赤字予定額を想定すると
20%は死守しなければならない最低ラインです。

当社は、建築関連業務を専門とした人材派遣なので、
的をしぼって営業をしますので、大手のようなやり方では
固定費がかさむ一方で、経営が成り立たないので、
見た目は地味になるのかもしれません。

ただ、企業理念でも書いているのですが、
建築関連業務こそ、人材派遣のシステム、アウトソーシング
の普及が必要な業種であるのは経験上間違いないと思います。
業務に必要な人材の確保を、会社単位ではなく、業務単位で
行う必要があると思います。
他業種と比較して低賃金なので、まだ労働と雇用のバランス
がとても悪いのですが、現在以上に悪くなることはないだろう
と考えていますので、今は種まきをする時期だと思っています。

理想の建築のあり方を考えたとき、キレイごとは抜きにして
適材適所の人材の確保は必要不可欠です。

テンポールは、「建築トータルコーディネート」を目指しています!

よし、また頑張れそうです(笑)。